実録:最優秀者決定

優秀者3者へのインタビューを終了し、いよいよ最優秀者を決定する議論が展開された。

磯崎:最終の選考に入りたいと思います。どういう形でこれを進めていったらいいかですが、最後の残りました優秀案3点の中から最優秀案を2時間以内に決めなければならないということが条件です。委員の先生方がそれぞれこれだと言う必要もないですが、今日午前中のヒアリングをした印象から、この案について改めてもう一度どのような考えでなされているであろうか、あるいは自分がどのように見ているかというコメントをそれぞれ3案について言っていただくというようなことから始めたらと思います。私は進行の方をしますので、順番としては、副委員長からお願いします。
山口:なかなかどれと決めるのは難しいと思いますけれども、今までの都市の中にあったいろんな文化施設の形態は、だいたいが人を寄せてきて、それで中に閉じこめてしまうかたちで図書館とか美術館とか音楽ホールとか、みんなそうなっています。ところが1960年代以降空間というのが広がっていって、例えばポンピドーのようなフォーラムの1階はほとんど人が自由に出入りしていて、閉じこめない、外にパフォーマンスの場所がある。そういうことになってきたのですが、ポンピドー以降新しいメディアが入ってきて、空間の使い方がまた変わって来たのではないか。そういう意味ではこの3案それぞれ21世紀に向けての空間の使い方の提案はなされている。ただ一番最初の古谷さん、これが一番ラジカルな空間の使い方の提案をして、これをもし選んだとしたら、かなり実現するまでだけでなく、実現してから先も色々考えたり、市民の参加により運営していくという問題点がありますけれども、非常に冒険に満ちた空間の提案だと思います。伊東さんのは建物そのものをひとつの都市の中のメディア空間として、提案しているのではないかと思います。だから建築として今までにない都市の中 のメディアとして提案されていて、それは魅力的なのですが、逆に言うと割にフロアの階層別は古典的な空間の使い方で、例えば1階や一番上は開放的ですが、それも割に予定された条件の中で使われているという意味では物足りない所があるような気がします。ただそれにこれから完成するまでに、いろんな付加的なメディアの機能をこの中にどう織り込んでいくかという問題点を解決すれば、これはこれで面白くなると思います。3番目の田島さんのものは、今の時点で21世紀のメディアテークはこういう風なものであったらいいのではないかと言う意味では割に現実的な解決を提案しているのですが、また一方メディアを織り込んだ空間として、あまり明確に答えていない所があって、例えばメディアビーグルという発想について説明の中で仙台のいろんな地点にこのメディアテークのブランチが出来てそのブランチといろんな関連を持ったメディアのやりとりの場がネットワークとして出て来て、更にそれが国際的なメディア空間との関係が出てくれば面白いですが、それはあの建物そのものがメディアビーグルになればいいという話があってそれは違うのではないか、そういう意味でこの3案の持って いる空間的な今まであった都市の文化空間の施設の中の先の提案というのは、それぞれあるのですが、それがみんな違うとそういう点でもう少しディスカッションしていく必要があるのではないかという印象を受けました。
磯崎: 次は藤森さんお願いします。
藤森: 最初の古谷さんの案は、一種の縁日というか、バザール的な状態の中でメディアと美術と図書を展開し、大変魅力的な提案で、それに対して非常に対照的なのが伊東さんの案で、具体的な場についての提案というのは基本的にあまりしていなくて、むしろユニバーサルスペース、無性格な、限定していない床があるから、これから自由にやってくれればいいという、非常に対照的な提案が出て、本当にそのメディアなり、図書、美術と使用者の接触が自由であり、なおかつ刺激的であり、なおかつ管理が出来るという情況の中で本当にどちらの空間がそれにふさわしいか難しい問題だという気がします。それは、古谷さんも最初から色々言っていますが、割合実際には限定的ではある。そう自由があるわけではない。それが非常に混じり合っているというのは魅力的だが、おそらくそれを本当に運営させるには古谷さんが言っていた、交番と言っていましたが、ステーションみたいなものが必要で、それはおそらく相当の量それを管理する人がいないと、実際には縁日の屋台と同じで、屋台の親父さんがあれだけいるから、バサールですと売り子やの親父がたくさんいるから出来るわけで、そういうこと だとむしろ伊東さん的なユニバーサルスペースの方が実は現実的には縁日とかバザールが実際には何もない場所だけがあって、そこでやっているわけで、むしろそういう意味では伊東さんの方が現実的で、実際にはバザール的状況を現出しやすいのではないかという気もしました。田島さんの案ですが、外観の作り方というのは非常にやさしくて、自然素材を割と使い、おそらくこれから常に一定の力で出てくる一つの表現だと思います。これくらい大規模なものは日本でまだ初めての提案だと思いますが、ただ一つだけ気になっているのは、外観の表現が本当に外観だけのようなんですね。中とあまり関係しないようで、中の空間のイメージとか、中のことはおっしゃっておられなかったので、ちょっとプランニングとファサードが切れているのではないかという所が大きな問題ではないかと思いました。
磯崎:次に菅野さんお願いします。
菅野:それぞれ魅力的な提案と言うことは当たり前ですが、それぞれの案についてだけの評価というようなことになれば、非常に革新的な古谷案は新しいこれからの建築型という課題にまっとうに答えた案だと思っています。それは、今回の課題の構築の仕方というのがギャラリー、図書館とその他というものの複合建築から、それらが融合したメディアテークという風に短期間の内に変容してきたわけですが、それが、それを引き受ける側に充分成熟したものがあるかどうかというあたりが一番懸念される所でありまして、古谷さんの案を充分こなせるだろうかということで一つ大きな疑問を持っています。伊東さんの案についてはあの地域で非常に大事にしている環境あるいはけやきといったようなものを建築化しているということで、均質的な空間ということでは伊東さんは必ずしもそういったものではないとおっしゃっていましたけれども、やはり他の案に比べますと、性格づけと言いますか、限定性は弱い。弱いだけにこれからいかようにも展開出来る案だと思いました。最後の田島案については、設計主旨を読みますと、私には大変難しいことをたくさん書かれているように思っていますが、建築を 見ますと非常に平易な構成になっていてその辺のギャップというのをものすごく感じられたところです。以上です。
磯崎:月尾さんお願いします。
月尾:基本的な判断として、現時点でのある種の完成度で判断するか、これから4年後に実現する可能性を考えるかということだと思います。私は少し可能性というものに重視して考えたらと思います。そういう点では古谷案は最初のあの図面の段階では私が非常にユニークだから話を聞く程度かなということでほとんど実現されないのではないかと思っていましたが、今回ヒアリングしてこの一週間位で大分細かい検討もされて、最初の段階からはかなり実現性は上がったと思います。それからメディアということについては非常に新しい提案をしているということで3つの中では一番提案的で、しかも将来の可能性はかなりあると思います。これも菅野先生がご心配されているように、出来た時、作って行くときに市の方が苦労されるということは大変ですが、考えてみればパリにポンピドーセンターが出来たことくらいの衝撃を与えるという意味では新しいものを作るという意味はあるのではないかと思います。それから伊東案は、空間としては大胆というか新しいという印象を与えるし、完成しているということですが、メディアについては余り深くは考えていなくて、ユニバーサルなスペースを提供しますというような考え方です。これには両方の考え方がありますが、可能性ということであれば何でもこれから詰め込めるということでは充分可能性はあるということで、むしろ気になっているのは先程のヒアリングの時にも質問したのですが、この非常に透明な美しさというのが完成した以後本当に今模型を見ている印象で我々が見るかというとおそらくそうではなくて、竣工までの非常に短い時間の美しさということで、出来た時以降どういうことになっているかということはよく考えて見なくてはならないのではないかと思っています。それから田島案については、辛い評価かもしれませんが、外壁に非常に新しさというものはありますが、メディアということについては余りにも固定的すぎて。もちろんこれも逆に言えば今後4年の間にどんどんあのチームが提案していたコミッティー的なものを作って議論してというようなことをすれば、それなりに対応できると思いますけれども、今の案では4年先まで考えたメディアというものに対して細かく規定しすぎて空間のライブの構成などもそれに対応しすぎているというような所が、むしろ発展の可能性とか新しいものが起こるという可能性を制約し過ぎ ているというような気もします。そんなところです。


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